さいたま百景とは

<<さいたま百景とは>>

●選定のねらい

寄せ集め都市、さいたま市
さいたま市は、2001年に浦和市、大宮市、与野市の三市が合併して誕生、その後2003年には岩槻市も加わり、人口約120万人の政令指定都市となった。これだけの対等合併は珍しいが、悪く言えば寄せ集め都市であり、それぞれの旧市の意識が強く残り、自分の地域のことしか知らない市民も少なくない。
そのような中で都市開発、市街地の高層化だけが進み、新しいさいたま市としての魅力も生まれないままに、地域ごとの個性が失われつつあるのが現状ではないか。

さいたま百景を選ぼう
そんな中で、市民有志が「さいたま百景」の選定を発意した。「百景」を選ぶことによって、さいたま市民としての一体感を形成するとともに、さいたま市の特徴を認識し、まちづくりへの関心を高めることが出来ないか、と考えたのである。
その狙いは、次の四つだ。
○さいたま市民としての一体感を醸成する
四市合併によって多様な地区からなるさいたま市で、それぞれの旧市市民が
お互いによく知り合うことで、一体感をつくりだしていきたい
○さいたま市の特徴を発見し認識する
さいたま市は特徴のないまちだと言われているが、多様な風景の中から、さい
たま市の特徴を認識し共有していきたい
○景観問題への関心を高める
さいたま市は開発の活発なまち。激しく変化する中で何を守り何を育てていく
べきか、景観問題について市民の関心を高めていきたい
○市民の多様な社会経済活動を活性化する
今まで知らなかった風景や地区があることを知ることで、観光、ボランティア活
動 などを含めた市民の交流を活発化していきたい

さいたま市の”今”を表す風景を
こんな狙いのもとに、ひとことで言えば「さいたま市の?今?-21世紀初頭のさいたま市のまちの姿-を表している風景」を選びだすことを目指した。
例えば、さいたま市の歴史・風土を表現している風景、人びとの営みや市民の活動が守り育ててきた風景、現在のさいたま市の都市活動がつくりだし、変化をもたらしている風景、さいたま市のまちづくりのあり方を考える材料となるような風景、などを選んでいきたい。
また、知られざる風景、ある時期ある瞬間にしか見られない風景、絶滅しつつある風景、ミスマッチが面白い風景、なども拾い出したい。
言いかえれば、ただの名所・旧跡の選定や、表面的な美しさや珍しさを求めた写真コンクールではなく、その風景を成り立たせている理由やまちづくりにおける意味を考えながら選ぼうとするものである。


●募集の方法

さいたま百景選定市民委員会を設置
「さいたま百景」の選定に当っては、市民有志で「さいたま百景選定市民委員会」を組織、広く市民からの応募に基づいて選定を進めた。委員会の運営は、さいたま市・埼玉県等の後援も得つつ、市民や企業、団体からの会費と協賛金によって、純粋に市民の自主的活動として行われた。(委員会の組織等については、巻末資料編を参照)

市民からさいたまの風景を募集
応募用紙三千枚を市内の公共施設等に配布し、広く市民からさいたま百景に対する募集を行った。応募に当っては、単に風景の写真をつけるのではなく、その風景が重要だと考える理由やそれへの思いなどを書いてもらうこととした。
募集は、四季ごとの風景を探してもらうため、二〇〇七年の六月から二〇〇八年の十一月までの約一年半にわたって行われた。
その間、応募された風景の中から面白いものを選んで、「さいたま百景ノミネート」と題して埼玉新聞に連載(計四十六回)を行った。また、中間展示会を二回、市民活動サポートセンターで開催し、来場した市民との意見交換を行った。それをきっかけにして、当委員会に参加した市民も少なくない。

委員会による風景探索イベント
市民からの募集と並行して、委員会の主催による、市内各地域の風景を探索するイベント「巡回委員会」を開催した。地域ごとにそこに住むメンバーを中心にして、一日、地域の地形や歴史を学びつつ面白い風景を捜して歩き回る。真夏、全く日陰のない見沼田圃の巡回から始めて、ほぼ各区を網羅、合計十一回の巡回イベントを実施した。
この巡回イベントから、さいたま市の地域の特徴や多様性、それらを示す興味深い風景を多々発見することが出来た。ここに参加した方々から、多くの興味深い風景が寄せられている。

応募の終了
2008年の11月、1年半にわたる応募を終了した。その結果、さいたま市各地域からおおむね満遍なく、合わせて四百五十六点の風景(重複を含む)が寄せられた。
私たち「さいたま百景選定市民委員会」の趣旨に賛同し、多くの興味深い風景を応募していただくとともに、資金、活動の両面で支援していただいた皆様に深く感謝する。

委員会による風景探索イベント
①見沼田圃中央部:07.6.23
②新都心周辺地区:07.8.25
③こうぬま・本町地区:07.9.24
④岩槻中心部:07.11.03
⑤西区北部地区:08.2.2
⑥慈恩寺?元荒川地区:08.3.30
⑦南区西部地区:08.5.18
⑧盆栽村?北部副都心地区:08.6.22
⑨西区南部?荒川右岸地区:08.8.10
⑩見沼区北部地区:08.10.19
⑪さいたま市縁辺部:08.11.23(車による)


●さいたま百景の選定

選定作業の開始
2009年1月からは、委員会メンバー二十二名による「選定ワーキンググループ」を設置して選定作業に着手した。選定は、応募点数の人気投票によるものではなく、メンバーの議論に基づく総意として選定することとした。
選定の手順は以下のとおり。
【1】さいたま市の特徴的な風景を満遍なく選ぶ観点から、全風景を十のカテゴリーに分類
【2】「百景」として鑑賞するに足る風景を選定するための、六つの評価軸を設定
【3】各分類ごとに、六つの評価軸を考慮しながら、それぞれ十五?二十ほどの候補を選定
【4】全分類を見渡して調整を行い、百点の風景を決定

六つの評価軸
評価軸は数値化できるものではないので、それらの観点を踏まえて総合的に評価するためのものだ。六つの評価軸の多くの項目で評価された風景もあるし、一つの評価軸で高く評価されたものもある。第二章での百景紹介ページにおいては、風景ごとに評価された評価軸が記入してある。それも見ながら各風景を鑑賞していただければ幸いである。

百景の決定
多くの興味深い風景の中から、百点に絞るのは大変な苦労であった。選定ワーキンググループによる選定会議は六回にわたり、ようやく「百景」を決定した。
ひとつの場所での四季折々の風景、同じ状況・趣きの複数地区の風景など、応募された風景をいくつか合わせてひとつの風景として選定した場合もある。なお、応募されていない風景の中に、同様な風景、場合によりもっとよいものがあることも考えられる。だから選ばれた「百景」は、さいたま市の中でのそれぞれの典型的風景の代表例と考えていただきたい。
決定後、選ばれた全百景を紹介した暫定公表用リーフレットを作成、応募者、協賛者、後援団体等に報告した。また、各区役所ロビー等で発表展示会を行った。